こだわり仕込み
焼酎の製造工程において最も重要な行程といえるのが「仕込」です。製麹(せいぎく)した麹に酵母と仕込水を加え、発酵させる一次仕込。一次もろみに仕込水と原料を混合する二次仕込があり、焼酎造りは通常、一次、二次の仕込(泡盛は一次仕込のみ=全麹仕込)を経て行われております。各蔵元では、美味しい焼酎を目指して様々な工夫を凝らしております。
甕(かめ)仕込み焼酎
現在では、ステンレスやほうろうのタンクが主流になりましたが、昔ながらの甕つぼ仕込にこだわった蔵元も少なくありません。甕で仕込む場合、1度に少量ずつしか造ることが出来ませんが、甕にある無数の小さい気孔により、もろみが呼吸します。そのため、焼酎はやわらかく、マイルドな味わいに仕上がります。
焼き芋(仕込)焼酎
通常の芋焼酎は原料の芋を蒸気で蒸して使用しますが、焼芋焼酎は文字通り、芋を焼いて造られます。芋を焼くことで、普段食べる「焼き芋」のようなホクホクとした甘みを引き出す事ができ、通常の芋焼酎と比較しても、旨み、香ばしさがより凝縮した仕上がりになります。焼酎好きの間で評判になり、人気が広がっております。
芋麹(仕込)焼酎
芋焼酎は、蒸米に焼酎用の麹菌を植えつけて(=米麹)造られるのが一般的です。一方、芋麹焼酎は米を用いず、直接原料の芋に麹菌を植えつける手法で、手間隙がかかり、製造が難しいため、まだまだ僅かな銘柄でしか造られておりません。芋のみを原料に使って造られる「芋100%」の焼酎とも言われております。
蒸留
焼酎は酒税法上、連続式蒸留(甲類)と単式蒸留(乙類=本格焼酎)に分けられ、芋、麦、米、黒糖などの焼酎は単式蒸留に分類されます。単式蒸留法は大きく分けて「常圧蒸留」と「減圧蒸留」の2つがあり、それぞれ違う味わいの焼酎が出来ることから、バリエーションに富んだ製品が生み出されるのです。(木桶蒸留は木製の常圧蒸留器です。)
常圧蒸留
常圧蒸留とは通常の大気圧(常圧)で蒸留する方法です。水の沸点は100℃ですが、アルコールを含むもろみは約90℃で沸騰するため、沸点が高い微量成分も同時に抽出されます。原料が持つ本来の甘みや旨み、香りを焼酎に残すことが出来ます。骨太でしっかりした味わいの焼酎を造りだす蒸留方法と言えます。
減圧蒸留
減圧蒸留とは比較的新しい手法で、蒸留器内の圧力を下げ、低温で蒸留する方法です。もろみが約40~50℃の低温で沸騰するため、沸点の高い微量成分は抽出されず、雑味を含まない淡麗でソフトな味わいの焼酎が出来ます。軽くて飲みやすい焼酎を造る蒸留方法と言えます。麦・米焼酎では一般的に使われます。
木桶蒸留
焼酎の蒸留器は現在、ステンレス製が主流ですが、昔ながらの木樽蒸留器はその材質の特性上、ゆっくりと熱が発散され、木の隙間からガスやアルコール分が微量ずつ抜けていきます。そのためまろやかで味わい深く、ほのかに木の香りを感じる焼酎を生み出すことが出来ます。現存数が少なく、希少な蒸留器と言えます。
濾過(ろか)
蒸留したての原酒には、フーゼル油が流れ出ます。このフーゼル油は、放っておくと焼酎の香りや味わいが損なわれるため、通常「濾過フィルター」を通して取り除きます。一方、この油は適度に残すと焼酎に豊かな風味を与えます。フィルターを通さず、貯蔵中に表面に浮いてくる油をすくい取る程度で瓶詰めしたのが「無濾過」の焼酎です。濾過の具合で原酒の風味をどう生かすのかが、蔵元の技術の見せ所です。
無濾過
蒸留直後の焼酎は、油成分が多く、荒々しい酒質になっているため、一般的に原酒濾過などをしてから貯蔵されます。無濾過焼酎は、原酒や割水した状態で、活性炭等による濾過を行わず、フーゼル油を丹念に手作業ですくい取るだけで製品化。濾過を行わないため、焼酎本来の旨みや深いコクを味わうことができます。
荒濾過
通常の製造工程では、活性炭やフィルター、イオン交換等を用いて濾過が行われております。荒濾過焼酎は、無濾過焼酎同様、極力濾過を抑えることにより、本来の旨みや深いコクを残す製法で、蔵元によりその手法は様々。そのため、荒濾過焼酎は、「焼酎の華」と呼ばれる旨み成分が白く濁って見える事もあります。
貯蔵(ちょぞう)
焼酎の貯蔵熟成期間は大きく分けて3つに分類され、初期(3~6ヶ月)は、ガス臭の元になる成分が減り、刺激的な香りが収まる期間。中期(6ヶ月~3年)は、様々な香味成分が化学変化によって落ち着き、丸みを帯びた酒質となる期間。さらに古酒(3年以上)ともなると、香味成分が凝縮され、独特の風味を持ち始めます。味わいは貯蔵に用いる容器によって異なり、それが焼酎の個性にも反映されます。
甕貯蔵
甕貯蔵は甕仕込と同様、タンクに比べて容量が小さく、手入れに手間がかかり、温度管理等が難しいため、造られる量は限られます。ただ、甕貯蔵された焼酎は、甕つぼの持つ特性により、やわらかく、マイルドな味わいに仕上がるため、最近見直されています。特に、長期熟成に適した貯蔵方法と言われております。
木樽貯蔵
焼酎の原酒を木樽に入れ貯蔵熟成することにより、木の成分が焼酎と融合。独特な風味の焼酎が生まれます。ウィスキーやブランデーに用いられる手法で、琥珀色に輝くその味わいは洋酒を彷彿とさせます。樽の材質は様々ですが、一般的には樫樽が多く、相性のいい麦、米、黒糖焼酎等ではポピュラーな貯蔵方法です。
長期貯蔵
蒸留したての原酒は、蒸留時独特の臭い(ガス臭さ)があります。焼酎のまろやかな風味を出すためには、一定期間の貯蔵が必要で、タンクや甕、木樽を用いて熟成させます。泡盛の古酒(クース)は最もよく知られた熟成酒で、時間だけが造り出せる味わいは格別。贅沢な造りで、希少なため、高価なものが多くなります。
ブレンド
同じ銘柄の焼酎は常に一定の味わいを保ち、蔵の伝統を守らなくてはなりません。その役割を果たすのが「ブレンダー」と呼ばれる人達です。販売されているほとんどの焼酎は、ブレンドの行程を経て製品化されています。銘柄ごとにメインの原酒があり、そこに数パーセントずつ他の原酒を加えながら味を決める作業。ブレンダーは蔵で造られる焼酎の特徴を知り、科学的な知識と経験で焼酎造りを支えているのです。
ブレンド焼酎(芋焼酎+麦焼酎)
現在販売されている焼酎のほとんどがブレンドされた後、製品化されていると言っても過言ではありません。単に芋焼酎と言っても、異なる麹や製法で造った原酒を、蔵独自の配合でブレンドして造られているのです。芋焼酎に麦焼酎をブレンドすることによって、コク、香ばしさをプラスし、奥行きのある焼酎に仕上がります。
ブレンド焼酎(芋焼酎+米焼酎)
焼酎をブレンドする目的は様々。不足している部分を補ったり、強調したい部分をより強調したり・・・。焼酎は、杜氏やブレンダーによる匠の技でブレンドされ、さらに旨いものへと進化を遂げるのです。芋焼酎に米焼酎をブレンドすることによって、爽やかで、さっぱりとした味わいをプラスし、親しみやすい焼酎に仕上がります。